2014年9月25日木曜日

駄目ギター その4「ギブソン・335-S」

 ぼくが「このギター、駄目だ。かっこいい。」と思ったものを「駄目ギター」と呼んで好き勝手に紹介しています。
 駄目なところがかっこいいんです。
 駄目なところが好きなんです。
 駄目じゃないと駄目なんです。

 今回紹介する駄目ギターはギブソンの335-S。
 ソリッドボディのES-335。

ソリッドボディのES-335

 ギブソンのエレキギターの型番に「ES」というのがあります。
 これは「Electric Spanish」の略で、つまり、「電気式スパニッシュギター」という意味。スパニッシュギターというのは、アコースティックギターのこと。空洞ボディであるアコースティックギターにマイクを付けて大きな音を出せるようにしました、という意味の型番。
 ギブソン初のエレクトリックギター、ES-150から連なる由緒ある型番。

 ES-335とは、1958年に発売された「セミ・アコースティック」と呼ばれる種類のギター。アコースティックとソリッドの中間、良いとこ取りした名器。

ES-335
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AE%E3%83%96%E3%82%BD%E3%83%B3%E3%83%BBES-335

 で、335-S。ES-335のソリッド版。1980年発売。ソリッドボディなので、ESの型番は付かない。デラックス、カスタム、スタンダードの3機種あり、それぞれボディとネックの材が違い、わかりやすい見た目の違いとして、デラックスとカスタムにはコイルタップスイッチとファインチューナー付きテイルピース付き。3年くらいしか作られず。その後もプレミア価格が付くこと無く、現在でもオリジナルモデルは10万円台で買えます。
 数年前に再生産されて、その意味がわからなくて狂喜乱舞したのは良い思い出。

詳しくはこちらのサイトを(英語)
http://www.vintageguitarandbass.com/gibson/335S.php

 スペックを見ると、クロスオーバー/フュージョン系ギタリストの需要を狙ってたのかなー。当時のクロスオーバー/フュージョン系ギタリストでギブソン使ってた人って、レスポールかES-335のイメージ。アレンビックあたりを意識してたのかな。ヤマハのSGとか。実際どうなのかはわからないけど。


アレンビックを使う渡辺香津美さん

ヤマハのSGを使うカルロス・サンタナさん

 なんてこと考えてたら当時のカタログ画像を発見。


向かって左から、カスタム、デラックス、スタンダード
「Now it's on a solid body that rocks.」
「With the hard edged sound and high energy response that have made Gibson solid bodies the choice of so many rock headliners.」
って書いてある。
 つまり、ロック・ギタリスト向けに作ったぜ、ってことみたい。まあ、クロスオーバー/フュージョン系ギタリスト向けにしては装飾が地味だと思ってたけど、そうか、ロックギタリスト向けだったのか。

 1980年頃のロックギタリストの使用ギターといえば

イケイケドンドンだったエドワード・ヴァン・ヘイレンさんは自作ギター

ザ・クラッシュのミック・ジョーンズさんはレスポール

シンリジィを再度辞めたくらいのゲイリー・ムーアさんはレスポール


オジーオズボーンに入ったくらいのランディ・ローズさんはレスポール

エリック・クラプトンさんはフェンダー・ストラトキャスター

クイーンのブライアン・メイさんは自作ギター

 なるほど。

 で、この335-Sのどこが好きかといえば、1980年代が始まり、パンク、レゲエ、クロスオーバー/フュージョン、HR/HMなど様々な音楽ジャンルが広く知られるようになり、楽器メーカーはその時代に合わせた新しい機種を発表して行く中で、ギブソンの「セミアコの名器をソリッドにしたよー」という無邪気な感じ。そして、それが市場に受け入れられずに消えて行った寂しい感じ。これぞ駄目ギター。